高岡亜衣 書道家 京都

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美と狂気 Beauty and insanity.

二面性が表現の
爆発を起こす。

恐ろしくて美しい、荒々しくも潔い、穏やかさと激しさが共存する表現。いきものを作り続けたい。
基本に忠実に技術を磨き、伝統を重んじながらも、明らかに気が狂った線質でそれを破る。そしてまた、基本に戻る。
美と狂気。それは自然であり、人間そのもの。

私は京都府北部・丹後地方という自然豊かな土地で生まれ育ち、現在は京都市で生活しています。京都市と言えば、伝統と文化の都。古き良き精神が集積する場所です。とりわけ私が住んでいる場所は、15代将軍 徳川慶喜が大政奉還を行う前に5年間ほど滞在した場所と言われています。

もうずいぶん経ちますが、以前は東京で活動するお話をいただいたこともありました。書道家として戦うなら、東京なのかもしれません。しかし私にとって東京は、無機質さを感じてしまう「出来上がってしまった町」でした。一方で京都は、伝統文化の町でありながら、その伝統を革新しようという動きも見られる地でもあります。伝統を破り生み出された革新は、深く美しいものがあります。

また私は「臨書」と呼ばれる、お手本に充実に書く稽古を習慣にしています。非常に伝統的で、そこには自由さはありません。しかし本当の意味で自由に線質をコントロールするには、自分の手・腕・体が思うように動かせる技術が必要になります。

温故知新、伝統と革新。基本に忠実に書を磨き、それを破る。そしてまた伝統に潜る。そのためにも、私は京都を拠点にすることを選んでいます。

表裏一体、陰と陽。相反する二面性が、時に爆発を起こす。そんな大きなエネルギーを書で表現していけたら、と。

どんないきものが
生まれるか。

私は常に、自然の中で生かされているという感覚を感じ続けてきました。海や山は美しい。しかし時に火山や津波などの自然災害を引き起こします。表裏一体。まさしく美と狂気。
人間はその自然の中で生かされている、自然の一部だと強く感じます。だからこそ、自然を破壊するのではなく、自然とともに素晴らしいエネルギーを湧き起こしていきたい。

その過程は、非常に苦しいものです。しかし、何かが生まれてくる楽しさがあります。苦しいからこそ、凄いものが生まれてくるという確信。火山の爆発のように。でもまだ見えない。苦しい。やがて、表現したいものが見えてくる。はじめは感覚だけが。やがて線だったり、線でなかったり。字だったり、字でなかったりと。

ああ、書きたい。
自然と一体になって、いかに表現できるか。自然から受けた感覚と私との「あいだ」に、新たに、どんないきものが生まれてくるのか。

そこには苦しみと楽しみという、表裏一体の二面性があります。

今は
矛盾していてもいい。

美と狂気。穏やかさと激しさが共存する。それが人間。
人の心は時に、火山のように噴火する危険もある。でも、いつもは穏やかで美しい花のようでありたい。
ただ美しいものではなく、内側からのエネルギーを表現したい。私は、私にしか書けないものを作りたい。

そのためには、相反する、矛盾するエネルギーを抱え続けなければなりません。

多くの場合、答えをすぐに出して、矛盾を無くしていくことが、合理的で賢いことなのかもしれません。でもそれでは「生まれてこない」ものがあるのではないでしょうか。

今は矛盾していてもいい。自分らしい新たな道が見つかるのなら。

何かが生まれてくるときには、苦しみと喜びが一緒にやってくるものだと思います。

それを、自分の手でつかみとる……希望、勇気、可能性に繋がる。
そんな美しくもあり狂気にもなる、人の心のありさまを表現することで、内なるエネルギーを感じてもらいたいと、いつも願っています。

Principle信条